タイ人からの名義借り(ノミニー)の摘発強化の脅威

ホタルジャパン株式会社、タイ人弁護士のクワンです。

タイで会社を設立する際、タイ人に過半数51%以上の株式を持たせて会社を設立する場合が多いかと思います。その際、タイ人に51%以上の株式を持たせるリスクに悩む日本人の方も多いことでしょう。

株式を所有するタイ人が実際に経営や業務に関わっていれば問題ありませんが、タイ人の知人や配偶者の親族、法律事務所や会計事務所が手配したタイ人の名前だけを借りてタイ人資本を51%にするなどの、いわゆる名義借り(ノミニー:Nominee)に対する摘発が近年強化されていることをご存じでしょうか?

ひとたびノミニーと認定されてしまえば、罰金、禁固刑、あるいは財産の没収、最悪の場合は事業閉鎖命令を受けるリスクが発生します。

過去、このノミニーに対する摘発は緩いものでした。しかし、近年はタイが国として力を入れて摘発を強化しています。今までは見逃されていたものが、現在ではそうではなくなってきているのです。

この記事では、名義借り(ノミニー)とは何なのか、どのようなリスクがあるのか、対応策はあるのかなど、難しい言葉を出来るだけ避けながら分かりやすく解説していきます。

皆様に事実を確実にお伝えするために、私自身が商務省事業開発局(DBD)に直接電話確認し、事実確認も行っています。

この記事を最後まで読み、あなたの会社を改めて見つめ直すきっかけになって頂ければ、大変嬉しく思います。

「名義借り」ではなく「名義貸し」と呼ぶ場合もありますが、意味は同じです。この記事では、日本人がタイ人から名義を借りるという意味で「名義借り」という言葉を使っています。

目次

名義借り(ノミニー)がなぜダメなのか?

ノミニーがなぜ違法なのかを理解するには、まず外国人事業法の中身を理解する必要があります。

外国人事業法による外国企業に対する規制

そもそも、なぜノミニーが違法行為とみなされるのでしょうか。

そこには、外国人の事業を規制する外国人事業法(1999年改正、2000年3月施行)の存在が大きく関わっています。この外国人事業法の第8条において、タイ国の国家安全に関わる事業、タイ国の芸術/文化/天然資源の保護、また、資本のある外国企業からタイ企業を保護することを目的とし、外国人もしくは外国法人がタイで実施できない事業内容を定めています。

外国人事業法で外国人、外国法人に認めていない事業内容は合計3種類43業種定められています。下記にその業種を簡略化してお伝えします。

第1表(9業種)外国企業の参入が禁止されている業種
例:土地取引、新聞発行・ラジオ・テレビ放送事業、農業・果樹園など

第2表(13業種)国家の安全、文化、天然資源、環境に影響を及ぼす業種

第1章(安全保障関連ビジネス)
例:銃などの武器・戦争用部品などの製造・販売・補修、国内陸上・海上・航空運輸および国内航空事業

第2章(文化・工芸に影響を与えるビジネス)
例:芸術品や美術品などの製造・販売(骨董品、民芸品、タイ楽器など)

第3章(環境・天然資源に影響を与えるビジネス)
例:サトウキビからの精糖、家具および調度品の木材加工など

第3表(21業種)外国人に対して競争力が不十分な業種であるとして、外国企業の参入が禁止されている業種

※ ただし、外国人事業委員会の承認により、商務省事業開発局長が許可した場合は可能。
例:会計/法律サービス、広告業、ホテル業、観光業、飲食物販売、競売、建築設計サービス、最低資本金1億バーツ未満または1店舗あたり最低資本金2,000万バーツ未満の小売業など

詳細は下記のサイトをご参照ください。

出典元:外資に関する規制(ジェトロ)

特に第3表について簡単に言い換えると、「資本力のある外国人がタイ人の職業や収入を得る機会を奪わないように」定めている法律です。つまり、タイ国として自国民であるタイ人を保護するための法律です。しかしながら、タイで会社を設立する多くの日系企業が関わる部分が、上記の第3表(21業種)の業種に当てはまります。

外国人事業法を回避するための名義借り(ノミニー)

上記外国人事業法の規制の内容を見て分かるように、会計や法律などのサービス業、小売/卸売業、広告業、飲食業にいたるまで、外国企業(外国人)はタイ国内で対象の事業を行うことが出来ません。

それでは、外国企業とみなされるのはどういった企業になるのでしょうか。外国企業とは、外国人もしくは外国法人の資本が過半数51%以上の企業のことを指します。よって、多くの外国企業はタイ人資本を51%以上にし、タイ国籍企業として会社登記をする必要が出てくるのです。

2026年2月の情報では、外国資本が入っているタイ国内の企業全体の約97%がタイ人資本を51%以上にしている企業になっています(=外国資本が51%以上の企業はたったの3%程度です)。

しかしながら、現実的には実際に出資して経営に参加するタイ人、株式を所有させられるだけの信頼できるタイ人パートナーを探すのは非常に困難です。そのため、タイ人の知人や配偶者の親族、法律事務所や会計事務所が名義だけのタイ人を手配する、もしくは法律事務所や会計事務所がタイ法人として株主の少数所有を支援することなどにより、タイ国籍企業として会社を設立するスキームが確立していったのです。

こういった外国人事業法の規制を違法に回避することを、いわゆる名義借り(ノミニー)と呼びます。「法の潜脱(法律回避)」行為として、タイ国の法律を犯す立派な犯罪とみなされます。

ノミニー違法行為に対する重い罰則

それでは、ノミニーとして判定されてしまった場合、どのような罰則があるのでしょうか。外国人事業法の第36条で下記のように定められています。

タイ人および外国人株主、法人株主に対する罰則

  • 外国人の代わりに株式の保有を支援、援助した罪として、3年以下の懲役または10万バーツから100万バーツの罰金、あるいはその両方が科されます。
  • 上記に加え、裁判所からの命令に違反する状態が継続した場合、違反状態が解消されるまで日額1万バーツから5万バーツの罰金が科され続けます。

法人に対する罰則

  • 事業の閉鎖指示
  • 資産の差し押さえ

株主である個人、法人の両方に対して重い処罰が科される可能性があります。

ノミニーに対する法的な見解は次の通りです。

ノミニーを利用した事業運営形態は「ビジネスの透明性の原則」に違反しているとみなされます。これは、真の株主である外国人の情報を隠蔽する行為だからです。さらに、タイ人の利益と国の経済を保護するために制定された法律(外国人事業法)を違法に回避する行為でもあります。また、ノミニーを利用した企業が本来得られないはずの特権を享受することは、公正なビジネス競争に悪影響を及ぼすため、ノミー行為はタイの法律において明確な犯罪とみなされます。

上述した通り、株主全員と法人に対し、重い罰則が科されます。外国人にとっては、タイ国で犯罪者として履歴が残ることになり、タイでのビジネスの継続が困難となります。それだけではなく、軽い気持ちで名前を貸したタイ人も同罪扱いとなります。

たとえ株式所有率が1%であったとしても、処罰の対象になるため注意が必要です。軽い気持ちでタイ人に株主になってもらうことは絶対にしてはいけないのです。しかしながら、株主として勧誘される多くタイ人は、罰則について知らされないことがほとんどです。

外国人事業法第37条は、外国企業(外国資本が51%以上の企業)が第8条で規制されている事業を行った場合に関して定めている規程のため、ノミニーとは関係のない条項です。

ノミニーを監視する様々なタイの機関

ノミニーの大きな摘発事例を見ると、特別捜査局(Department of Special Investigation:DSI)が中心となって摘発を行っているように思えます。しかし、特別捜査局(DSI)が動くのは大きな案件と判断されたときであり、実はノミニーを監視する機関(入口)は他にもあります。

特別捜査局(DSI)は、経済、社会、安全保障、国際関係に深刻な影響を与える犯罪の予防・制圧・管理を行う機関であり、経済と国家の安全保障に直接関わる事件を担当しています。

まず、代表的な機関が商務省事業開発局(DBD)です。企業情報を管理している機関のため、取締役や株主情報、財務情報などから異常を察知します。後半で実例をお伝えしますが、疑いのある企業には出頭要請状が届き、ここから呼び出しを受けることになります。

その後、商務省事業開発局(DBD)が更なる情報確認が必要と判断した場合には、歳入局(Revenue Department)マネーロンダリング対策局(AMLO)労働局などと連携を取る形になります。その際、商務省事業開発局(DBD)が大きな案件と判断した場合には、特別捜査局(DSI)に捜査を引き継ぎます。大きな事件でない場合は、検察に送られ、裁判の流れになります。商務省事業開発局(DBD)がノミニーに関して直接処罰を決定することはありません。

商務省事業開発局(DBD)に電話確認を取りましたが、各機関と財務や税務情報などでデータベース上では繋がっていないとのことでした。

もう一つの窓口として、タイ警察中央捜査局(Central Investigation Bureau:CIB)があります。こちらは通報があった場合がメインになると思われますが、ここから呼び出しを受けることもあります。この場合も同様で、大きな案件と判断された場合には、特別捜査局(DSI)に捜査を依頼し、大きな案件でない場合は、検察に送られ、裁判の流れになります。もしくは、タイ警察中央捜査局(CIB)が直接処罰を決定する場合もあります。

いずれにしても、ノミニーが疑われる事実を察知された場合には、どの機関でも捜査の入口にはなり得ます。また、いずれの機関にも専用の通報窓口がありますので、ノミニーに関わらず、違法行為が通報で発覚する場合も十分起こり得ます。

ノミニーとして疑われやすい企業

それでは、これらノミニーを監視する機関は、どのような視点で監視をしているのでしょうか。疑いをかけられる企業の特徴は下記のポイントが挙げられます。

  • タイ人株主の名前または法人が、複数の会社の株主として登録されている。
  • 株主の変更が頻繁に行われている。
  • 株主全員が同じ住所を使用している。
  • 会計事務所や法律事務所が架空のタイ人株主を手配し、全員の住所を事務所の住所として登録している。
  • 会計事務所や法律事務所がタイ法人として株式の所有を肩代わりしている。
  • 会計帳簿や財務諸表に不自然な資金の流れが見受けられる。
  • 外国からの送金や借入れなど不自然な資金の供給が見られる。
  • 株主であるタイ人と外国人の間に不自然なお金の流れが見受けられる。
  • 会社のお金が外国人へ不自然な「サービス料」や「借入金の返済」として支払われている。
  • 契約書の内容から、会社の実権を外国人にしていることが疑われる。
  • タイ人株主が事業に関わっていない、把握していない。
  • タイ人株主が会社から配当金などの利益の享受を受けていない。

また、商務省事業開発局(DBD)は、以下の6つの業種において脱法行為が特に行われやすいとして、重点的に調査・監視を行っています。

  • 観光および関連事業(レストラン、飲食店、土産物店など)
  • 土地・不動産取引事業
  • eコマース、輸送(ロジスティクス)、倉庫業
  • ホテル・リゾート事業
  • 農業関連事業
  • 一般建設業

以前は摘発が緩かったノミニーですが、昨今は監視が急激に強化されています。

統計では、2021~2022年の摘発件数が148件だったのに対し、2025年の摘発件数は873件と大幅に増加しています。摘発を強化している状況は数字にも表れています。
※ 2023~2024年の公表統計データは無し

2026年2月16日付の商務省事業開発局(DBD)の正式発表にて、「現在株式の所有を幇助している法律事務所/会計事務所の摘発を強化中」との記事が出ています。

こちらはタイ語の記事になります。

現在株式の所有を幇助している法律事務所/会計事務所の摘発を強化中

法律事務所/会計事務所の支援を受けている日系企業や店舗様も対象になりますので、十分にご注意ください。

実際に起きた事例・判例

ここからは、実際に摘発された事例と、私の身近な知人に起きた実際の出来事を具体的にお伝えしていきます。

プーケットノミニー事件(刑事法院判決 Red Case Aor. 第2812/2567号)

2024年に特別捜査局(DSI)がプーケットにある法律/会計事務所の家宅捜索に踏み切りました。この会社は、外国人向けに法人登記、会計処理、税務相談、ビザや労働許可証の代行支援などのサービスを行う会社でした。

当会社は、60社に対し名義上のタイ人の株主や取締役をノミニーとして複数手配しており、外国人事業法の規制を逃れるための支援をするために設立されていました。これにより、外国人が本来許可されていない事業を行ったり、禁止されている土地や不動産取引をしたりすることを実現可能としていました。

この大規模な摘発を受け、刑事法院にてタイ人、タイ人法人、外国人、外国法人を含む合計23名が有罪判決を受けることになりました(国籍は正式には公表されていません)。

結果、被告人23名と法人に対し、下記の厳罰が下されました。

量刑

  • 禁固10年(自白し捜査に協力したため、半分の5年に減刑)
  • 被告に前科がなかったことから、執行猶予2年
  • 1年間の保護観察期間
  • 各被告に対し20万バーツの罰金
  • 会社の解散(登記抹消)命令
    ※ 裁判所の命令に従わない場合、違反が続く期間中、日額1万バーツの罰金

それに加え、この法律/会計事務所は、ノミニーを利用して外国法人ができない不動産売買事業を斡旋しており、本来納めなければならない不動産評価額の10%の税金と手数料を回避することで、数十億バーツの利益を出していたことが明らかになりました。これを受け、対象の6件の土地が土地局に通報される結果となりました。

国の経済と安全保障に悪影響を及ぼす行為として、法を守るべき法律/会計事務所に対しても厳罰が下された事例です。

この事件に関する特別捜査局(DSI)の実際の記事

私の知人に商務省事業開発局(DBD)から「出頭要請状」が届く!?

これは、私のタイ人の知人に起きた実際の出来事です。結果的にはノミニーと判定されることはありませんでしたが、対応を間違えれば知人が犯罪者となっていたかもしれない危険な出来事でした。

私の知人は、日本人の知人から頼まれ、51%の株を所有するいわゆる名義借りをお願いされました。当時、その会社はある事業を停止し、ほぼ休止状態。前の事業のタイ人マネージャーに51%の株を所有させていましたが、そのマネージャーが抜けるということで、その代わりをしてくれとのお願いでした。

結局その友人は引き受けることにしたのですが、名義変更から1年ほどが経過した頃、その会社が海外との取引額の大きい貿易事業を開始しました。今まで売上も経費もほとんど発生していなかった会社でしたが、急に多額の売上が計上され始めた頃、51%の株を所有している知人に、商務省事業開発局(DBD)から突然「出頭要請状」が届いたのです。

その出頭要請状には出頭する日時が明記されており、延期やキャンセルは一切不可。また、20項目以上の書類を持参するよう指示が記載されていました。

その彼女は私のところに相談に来ましたが、日本人との関係性を示す証拠、この会社の事業に関わっていることを示す証拠、株主になってから現在までの事業内容や財務状況などの資料を準備し、しっかりと説明が出来るようサポートを行いました。

その準備のおかげもあり、当日はDBDの担当官の質問にしっかりと回答することができたそうです。また、その知人は以前からその日本人と関係性があったこと、会計のお手伝いを少ししていたこともあり、ノミニー判定とされることはありませんでした。ただ、用意周到に事前準備をしていなければ、ノミニー判定された可能性は十分に考えられた事案です。

商務省事業開発局(DBD)が出頭要請状を送ってきた理由は明らかにノミニーを疑ったものであり、財務諸表などを見てノミニーの監視をしている事実が伺える出来事でした。

グレーな会計事務所/法律事務所

こちらも私が実際に目にした日系企業の実例をお伝えします。

タイ人の名義貸しを支援する危険な法律事務所

これは私の知人である日本人の過去のお話です。

その日本人の方と知り合った時は、既にその方はタイに会社を設立していました。その会社はあるタイ人の法律事務所に会社設立から会計業務までをまとめて委託しており、会社設立時にタイ人株主(いわゆるノミニー)を2名手配してもらっていました。

その2名のタイ人は一切事業には関わらず、その日本人の方は会ったことさえありません。タイ人の手配料として、その日系企業は法律事務所に毎月1人あたり1万バーツ(合計2万バーツ)を支払っていました。

法律事務所とすれば、全く事業に関わらないタイ人を手配するだけで毎月1人1万バーツの報酬を得られるわけですから、非常に楽で継続的な収益に繋がります。依頼する日系企業に関しても、法律事務所を採用する安心感もあったことでしょう。

しかしながら、プーケットの判例でも分かる通り、たとえ法律事務所であっても摘発の対象になります。ノミニーとして認定されてしまえば、そこに関わる個人、法人、法律事務所までが処罰の対象となってしまうのです。

たとえ法律事務所からの提案だとしても、安易に信用するのは危険です。

数パーセントの株式所有を肩代わりする日系の会計事務所

こちらも現在私が実際に目にしている数社の日系企業のパターンです。

日系企業にとって、タイ人に51%の株式を持たせるのはそもそも将来のリスクに繋がります。突然そのタイ人に抜けられてしまったり、会社を乗っ取られたり、勝手にお金を使われたりリスクがあるためです。

ホタルジャパンではリスクを最小限に抑える対策実施のご支援が可能です。

それらのリスクを回避するため、日系の会計事務所が数パーセント(例えば3%)の株式を所有し、タイ人に51%以上を所有させないスキームを支援している日系の会計事務所が存在します。日系の会計事務所であっても資本の51%以上がタイ人国籍のため、タイ国籍法人として3%の株式の所有が可能なのです。

例:日本人経営者49%、日系の会計事務所3%、タイ人48%にしておけば、日本人側が実権を握ることができるというスキームです。

日系の会計事務所とすれば、会計代行業務を依頼してくれる顧客の継続的な確保、またその手数料を得られるメリットが発生します。依頼する日系企業にすれば、同じ日系ということでの安心感もあるでしょう。

但し、会計事務所は取引先としてサービスを提供している立場であり、その日系企業の経営や業務に携わり、配当金を享受しているわけではありません。当然ながら、外国人事業法の規制を逃れるための明白な行為なわけですから、将来的にノミニーとして認定されるリスクは大いにあると考えられます。

別記事でもご紹介したように、商務省事業開発局(DBD)は法律事務所や会計事務所の摘発を強化中であると正式に発表しています。しばらくは問題なくても、ノミニーとして疑われる状態が続く限り、いずれは摘発される可能性は継続していきます。

法律事務所や会計事務所も目を付けられていますから、別のタイ人の株主を採用し、この状況から逸脱しておくことをお勧めします。

オンラインを活用して日本人が実権を持つ100%タイ国籍企業

下記のようなケースも見受けられます。

日本語で検索をすると、タイ国内でサービスを提供する会社の日本語のウェブサイトが出てきます。特定を避けるため業種の記述は避けさせて頂きますが、その中の会社のいくつかに、タイ人資本が100%の会社が複数社見受けられます。

ウェブサイトは日本語のため、当然顧客対応やサービスの提供はウェブサイトを運用している日本人が担当しています。ただ、その会社の株主に日本人の名前は一人も存在しません。会社の住所もタイ人の個人の住居だったりもしています。

サービスを受ける顧客がどの口座にサービス料を振り込んでいるかは不明ですが、サービス料は何かしらの形で日本在住の日本人に流す必要があるため、個人の口座に振り込んでもらってタイで現金で受け取る、顧客から日本の法人または個人の口座に振り込んでもらうなど、何かしらのスキームを組んでいるものと思われます。

こちらはノミニーという観点からは少し外れるかもしれませんが、100%タイ国籍法人を利用し、日本人が裏で実権を持つ。労働許可証を取得せずにタイ国内から収益を得ているという点では、外国人事業法の規制をすり抜ける悪質な行為と言えます。

今はバレずに済んでいるものの、通報があったりすると、外国人事業法に違反しているとみなされるリスクの高い事業形態と捉えています。

ノミニーのリスク対応策

これまで様々な実例を挙げて解説してきました。ノミニーの取り締まりが厳しくなっている中、日系企業にとっては事前のリスク対応をしておくことが必須事項となります。リスクをゼロにすることは難しいですが、リスクを限りなく最小限にしておくことは可能です。

具体的には、下記のポイントで対策を打っておくことが重要となります。

  • 株主間契約の締結:株主間で明確な契約書や協定書を作成しておく(役割や配当金など)
  • タイ人株主の役割への理解:タイ人株主に対し、自身の役割や義務、株主としての法的地位を正しく理解させておく。
  • タイ人株主の事業内容把握:タイ人株主に対し、会社がどのような事業を行っているか、現在の財務状況がどうなっているかなどを説明できるように教育しておく。
  • 会計事務所や法律事務所の支援回避:最近の摘発事例からも分かるように、近年会計事務所や法律事務所も摘発対象になっています。自身でタイ人株主を手配し、正しく契約書を結んで他社に依存しないようにしておく。
  • 資金の透明性の確保:タイ人株主に自身で出資させる(会社設立時は25%の資金が銀行口座にあれば問題ありません)

上記を完璧に網羅することは現実的には困難な場合が多いですが、出来る範囲の対策を打っておくことで、ノミニーとして摘発を受けるリスクを限りなく軽減させることが可能です。

また、急にタイ警察中央捜査局(CIB)や商務省事業開発局(DBD)からタイ人株主が呼び出しを受ける可能性もありますので、慌てずすぐに対応できるよう準備をしておくことも大切です。

まとめ

名義借り(ノミニー)について解説してきましたが、如何でしたか。

今までは何事も無かったとしても、ある日突然摘発対象になったり、タイ人株主に出頭要請状が来るかもしれません。他人ごとでしかなかったことが、ある日突然自身に降りかかってくる可能性があるのです。

その場合、自身が犯罪者となり、日本へ強制退去、タイへの再入国禁止処置が下されるかもしれません。更に、せっかく築き上げてきた自身の会社が閉鎖され、財産が没収される可能性も生じます。

また、自身が犯罪者になるだけでなく、気軽に名前を借りていたタイ人の知人、恋人、配偶者の親族が突然犯罪者になる可能性だってあるのです。その人の人生に関わることであり、決してお金で解決できる問題ではありません。

タイではノミニーの摘発が急激に強化されています。皆さんの会社や大事な人を守るためにも、今までの緩かった考えは捨て、会社のある方は自身の会社を改めて見つめ直してみることをお勧めします。

また、これから会社を設立しようとしている方はしっかりと専門家に相談し、最大限のリスク対応をした上での会社設立の手続きをすることが肝要です。会社の登記などは誰でも出来ます。会社登記を金額が安いという理由だけで代行会社を選ぶのではなく、後々リスクが生じないような会社設立の手続きをして頂ける会社選びが重要です。

今までの「大丈夫だろう、、」という古い考えを排除し、しっかりと今のうちからリスクと向き合っておくことをお勧めします。ひとたび摘発の対象になってしまえば、多大な労力と時間、費用を費やし、自身や会社の信頼を落としてしまうことになってしまいますから。

当社ホタルジャパン株式会社では、既存の会社のリスク診断、会社設立の支援、商務省事業開発局(DBD)に呼び出されたタイ人に対する事前準備アドバイスなどのご相談が可能です。当社を一つの選択肢としてご検討ください。

皆様の事業が正しく成長と繁栄に向かって進むよう、ホタルジャパンは応援しています。

何かありましたら、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

タイの法律に関するブログ記事を書くタイ人弁護士のクワン

クワン(タイ人弁護士)
ホタルジャパン

Managing Director

名門タマサート大学法学部出身。タイ人弁護士。自身のKYC法律事務所を15年以上経営する傍ら、夫と日系企業様や個人様のビジネス支援をするホタルジャパン株式を経営。タイ国内保険会社アドバイザー、国土交通省管轄の自動車関連会社管理委員会にも所属するなど、幅広く活動中。夫は日本人唯一のタイ国法務省公認法廷通訳有資格者、タイ現地の実務経験豊富。
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